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Channel: LOVEシアターでつかまえて!
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高度経済成長期を駆け抜けた青春~『虹とマーブル』

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相変わらず時間経ちまくりですが……。
倉持脚本目当てに観劇して参りました。


“『虹とマーブル』~2015年8月23日(日)公演キャスト【マチネ】”

鯨井 紋次/小出 恵介    陰山 桂三/小松 和重
芹沢 蘭 /黒島 結菜    山下 勇、新見 徹、星野 郁夫、関 智紀   /小林 高鹿
南田 静馬/木村 了     森 夏枝、佐々木 澄子          /ぼくもと さきこ
元吉 冬香/ともさか りえ  木村 文雄、上野 邦明、ジャンク大西、山崎 岩男/玉置 孝匡
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1960年代、チンピラの鯨井紋次は、仲間の山下とヤクザの陰山と組んで密輸で稼いでいた。しかし、それに飽き足らない紋次は、腹違いの弟である静馬も引き入れ貿易会社を立ち上げる。
政財界と付き合いのある銀座のクラブのオーナー冬香の助けを借り、更に稼ぐことに成功。
70年代、紋次の野望は留まる事を知らず、山下の姪であるというを女優にして映画興行、プロレス興行と商売を広げていく。そして80年代、紋次は大きな事件に巻き込まれる事になり……。
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やって来たのは、世田谷パブリックシアター
席は2階A列32番。2階最前列の上手側です。

で、肝心の舞台は

面白かった!

倉持サンの舞台にしてはちょっと珍しいテイストでした。

では、早速レポへ~。
かなりウロってるので軽めに……

★全体の感想★

物語は、東京オリンピックの近づく高度経済成長期の時代から始まります。
会話の内容からすると オリンピックの二年前……1962年がスタートですかね。
60年代から80年代まで、とある野心家の若者がチンピラから実業家になり上がっていく姿を テンポの良い会話劇で見せていきます。
小説だと三人称 と言われるような視点になるのですかね。
主人公はいるけど 、一人称目線になる事はなく内面描写などはほぼありません。
観ているこちらは 彼の人生を淡々と見つめていくという感じです。
波乱万丈な人生なんだろうと思いますが、派手な部分は極力カットで、あくまで主人公と彼を取り巻く周囲の人間たちの会話の中で内容が進んでいきます。

舞台は三幕構成になっていて 詳しい説明はありませんでしたが 60年代・70年代・80年代と時代が進んでいるのだと思います。
一幕は倉庫。二幕はドラマの撮影のセットとプロレス会場の控室、三幕は大理石階段がある豪勢な主人公の家。
二階建てのセットがあり、それは基本的に常駐でした。
どのセットもなかなかかっちりしておりました。

オリンピックを始め、マリリン・モンローの映画や死、三億円事件、イラン・イラク戦争、ハイジャック事件、ロッキード事件など、昭和に起こった印象的な出来事も会話の中に入ってくるので、昭和を生きた人達には懐かしいのではないでしょうか。
私は昭和生まれですが、まだ年端もいかない子供だったので、全然時系列がハッキリしませんが(駄目)。
時代ごとにそれぞれの衣装も変わりますが、特に時代によって変わっていく女性キャストのファッションは注目どころです。

脚本は倉持裕サン、今回一番のお目当てです。
彼にしては時代背景もしっかりしてるし、硬派な(?)話だなぁと思いつつ観ていましたが、会話のテンポの良さと、どこか淡々とした目線はいつも通りだったのかも。
何よりラストが結構昔ながらのドラマっぽいというか

『太陽にほえろ!』の松田優作の「何じゃあこりゃああっ!!」に通ずるものがあるというか(笑)。

それこそ昭和っぽくて笑えてしまいました。
いや、笑うラストじゃないんですけどね。
因みにキャスト陣の名前もちょっと一昔前のドラマっぽくて良いなと思います( ̄∀ ̄)

どこか昔のまま枯れていく男性陣と、時代とともに変幻自在に逞しく生きる女性陣の姿が対照的に描かれていました。地位によって衣装が変わる男性陣と、時代によって衣装が変わる女性陣というのもそこを象徴しているのかもしれません。

キャスト陣は、未熟なヒーローヒロインを周りが固めたという感じですかね(すみません)。
脇役陣は安定感があって良かったと思います。

タイトルのメルヘンさから、何となくいつもの色んな意味でフワッとした倉持サンの世界観を期待しましたが、まさかのギラギラ系主人公という意外性で楽しめました( ̄∀ ̄)
アメリカンドリーム……ではないですが、高度経済成長期の日本にも確かに夢と可能性が満ち溢れていたのだなぁと、遠い時代に想いを馳せたくなる物語でした。


お次は、キャストさん感想へ↓
軽めに

鯨井紋次●小出恵介くん
名前がモロに昭和のチンピラみたいな感じですね(笑)。
テレビではよく見かけていますが、舞台で観るのは初めて。
お顔立ちも男臭くてちょっと昭和っぽいし(オイ)、役自体は合っていたと思います。
私自身は、冴えない役でしか彼を見た事がなかったですが、ギラギラしている上に胡散臭い雰囲気もちゃんと出てましたし。
ただ、出演者の中で抜きん出て台詞が聴き取りにくいのがかなり気になりました(すみません)。
舞台は結構経験しているみたいなんですけど、台詞の走り方とか舌が回り切っていない感じとか、経験値の割には未熟なんじゃないかなと(汗)。
早口なところは、昭和の映画っぽくて良いとは思うのですけどね。
結菜ちゃんが10代で、まだ舞台経験値がない事を考えると、もうちょっと相手役を引っ張る部分が欲しかったかもしれません。
でも、2人並んでいてもあまり犯罪っぽさがなかったのは良かった( ̄∀ ̄)
最終的に、彼が絡んでいた事件はロッキード事件だったって事ですよね。
あの事件の内容はよく知りませんでしたが(あまり知ろうともしていなかった)、今回どんなものか理解できました(無知)。
紋次はタイトルの通り、正に高嶺の花……どころか虹を掴もうとしてたんだけど、その虹はマーブルのように溶けてしまった……って感覚的なところですけど、タイトルはそういう事なのだろうなと思いました。
いや、大理石もマーブルだったので単に視覚的な事だけかもしれませんが……(駄目)。
ラストは前述の通り、昔の映画みたいだなと思いましたが、チンピラでスレスレの手段で成り上がった彼の末路としては一番相応しかったのかもしれません。


芹沢蘭●黒島結菜ちゃん
紋次が手に入れた高嶺の花の1つだったと思われる蘭。名前が既に花ですもんね( ̄∀ ̄)
お芝居が上手いという感じではありませんが、初々しく瑞々しい演技で舞台に花を添えてくれます。
脇役キャスト陣が達者だった事を考えると、ヒロインとして役割は果たしていたと思いますし、倉持サンの作風にも合っていました。
彼女は登場時にはまだ学生で、チンピラだった紋次達にマリリン・モンローの映画『紳士は金髪がお好き』の中の台詞が好きだと語ります。

「四六時中お金の心配をしていたら、相手を愛する暇がないじゃない」

映画は未見ですが、うむ、全面同意の名言(オイ)。
考えてみればこの言葉は1つのキーワードで、少なくとも女優になり紋次と結婚して以降は、彼女はお金の心配をする事はなかったと思われます。
でも、結局2人は別れてしまったと思うと皮肉ですな。

女優となった蘭のドラマはハイジャック事件の映画の影響で中止になってしまいますが、衣装やセットが如何にも昭和っぽくて良かったです。
結菜ちゃんは素朴で太めの眉が古いドラマに合ってそう(褒め言葉)。
何となく、『おかみさん時間ですよ』の時代の浅田美代子サンを連想しました(笑)。

ちょっと感情の動きが希薄に感じられたのは惜しいなと思いましたが、堂々とした舞台姿はとても良かったです。


南田静馬●木村了くん
了くんは舞台では何度か観ていますが、何か胡散臭い感じで良かったです(褒め言葉)。
一応紋次の弟らしいですが、突然物陰から出て来てのカミングアウトだったので、いずれどこかで裏切るのではと見守っていましたが、むしろ最後まで兄の事を心配しているちゃんとした弟くんでした(笑)。
奔放な紋次と、知性派で頭の良い静馬は好対照。
彼も、素性のよく判らんような状態から弁護士と確実に成り上がっていきます。
世渡り上手そうでしたし、何となく判らんでもない気がします。
ちょっと蘭の事が好きなのかな?思わせる部分があり、終盤それで紋次と言い争いになります。
いつもは大人しい静馬が感情を露わにしたところを見ると、そうなのだろうなと思いますが、彼の口から真実が語られる事はありませんでした。
了くん、まだ20代なのに妙にオッサン臭いというか(すみません)、ポロシャツが非常に似合っていました( ̄∀ ̄)
素朴な容姿も昭和っぽいですしね。
まだまだ若いイメージがありましたが、貫録がついて良い俳優サンになったのだなと思いました(どんな立場?)。


元吉冬香●ともさかりえサン
倉持サンの舞台ではよく見かける方ですね( ̄∀ ̄)
貫録といえば、ともさかサンも気付けば随分貫録のある女優サンになったのだなと改めて(今更)。
銀座のクラブのオーナー。
政界の大物とも繋がりがあり、紋次の成り上がり人生のキーマンとなります。
時代によって、相手によって変幻自在な女性で、出て来る度に衣装や髪型が変わります。
いや、皆変わるのですけど、彼女が一番判り易いというか。
何となく『極道の妻たち』を連想しましたが、実際倉持サンのイメージもそうだったみたいですね。
真意の見えない怖い部分がありつつも、蘭と話している姿は優しいお姉サン的な側面もあり、若い結菜ちゃんを上手く支えていたなと思います。
蘭と冬香もまた対照的な女性像ですが、逞しい女性だというのは共通する部分ですね。


陰山桂三●小松和重サン&山下勇、新見徹、星野郁夫、関智紀●小林高鹿サン
小松サン、初見の方かと思いきや、以前ケラの『黴菌』で観ておりました。ほとんど覚えていない……(駄目)。
最初はショバ代を取りにくるヤクザですが、紋次と共に商売に協力していき、徐々に丸くなります。
終盤には哀愁の漂う気の良いオジサンになっていて、冒頭との落差が◎でした。
まぁもともと心底悪そうな人には見えませんでしたけどね(^^ゞ
若いキャスト2人を支える渋い存在感で良かったです。
どうでもいいですが、ちょっと野間口徹サンに似てますね(本当にどうでも良かった)。


高鹿サンは、観るのは約1年ぶりぐらいですかね。長かったなぁ(涙)。
最初は紋次と起業するチンピラ仲間として登場、蘭のオジサンだったんだっけな……(曖昧)。
上半身裸になるシーンがありますが、めちゃくちゃ細かった……。
新見は蘭と共演予定だった俳優サンだったかな。ロミジュリのパリス伯爵みたいなお邪魔虫感でウケました。
星野は、プロレスのシーンで出て来る役ですがヒゲ面と横分けが新鮮(役割はよく覚えていない)。
関は、代議士の秘書か何かだったか、嫌み臭い雰囲気が腹立たしくて良かったです(笑)。
チンピラっぽいアロハもスーツも似合うとは素晴らしい。
演じ分けも判り易くて◎。


森夏枝、佐々木澄子●ぼくもとさきこサン&木村文雄、上野邦明、ジャンク大西、山崎岩男●玉置孝匡サン
ぼくもとサンは、いつもながらにあまり本筋には関わって来ない役柄ですね。
主な役は夏枝で、紋次達のチンピラ商売を手伝う為に洗濯機の宣伝文句を言ったり、最終的には紋次の家のお手伝いサンになっていました。
登場時の姿は時代を感じさせる盛り盛りのアップヘアーとワンピース。
ちんちくりんですが、意外とその格好が似合っていました(コラ)。
彼女も時代によって見た目が変化した1人なんですよね。
女性はやっぱり流行に敏感なモノなんですかね(そこ?)。


玉置サンは、見事な安定感。
最初の人の良さそうなヤクザぶりも良かったし、やたらと哀愁のあるプロレスラー役も良かった。
というか、あれで戦えるのかぐらいな物悲しさが漂っていましたが(笑)。
如何にも嫌な雰囲気の代議士も◎。

PPPP組は多くの役を演じ分けていましたが、倉持サンの意図もちゃんと理解しているし安心して観ていられますな( ̄∀ ̄)


内容のないレポな上、ウロってますが、こんなところで……(駄目)。

舞台自体は非常に面白く、3時間の長丁場も苦にならずに楽しめました。
高度経済成長期の日本とか、バブル期の日本とか、その渦中にいたらどんなだったのでしょうか。
かと言って、自分は平凡な生活を送っていたでしょうか、一度でいいから熱狂していた時代を肌で感じてみたかったなぁと思ってしまった観劇後でした。

では、お付き合い頂いた方がいましたらどうもでした!

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