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これが本当の"大人の新感線"~いのうえ歌舞伎BLACK『乱鶯』

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遠い昔のレポアップ中です。

がっつり去年の演目ですな( ̄∀ ̄)

“いのうえ歌舞伎BLACK『乱鶯』~2016年3月16日(水)公演キャスト【マチネ】”

鶯の十三郎  /古田 新太    丹下屋 総兵衛/逆木 圭一郎
お加代    /稲森 いずみ   お春、お照  /村木 よし子
小橋 勝之助 /大東 駿介    半助     /インディ高橋
おりつ    /清水 くるみ   おとき    /山本 カナコ
火縄の砂吉  /橋本 じゅん   弥吉     /礒野 慎吾
お幸     /高田 聖子    松下 新五郎 /吉田 メタル
勘助     /粟根 まこと   お竹、お夏  /中谷 さとみ
小橋 貞右衛門/山本 亨     おさ多    /保坂 エマ
黒部 源四郎 /大谷 亮介    なまずの又次 /村木 仁
彦衛門    /右近 健一    真造     /川原 正嗣
太兵衛    /河野 まさと

★その他の皆様★
武田 浩二、藤家 剛、加藤 学、工藤 孝裕、井上 象策、南 誉士広、熊倉 功、藤田 修平、下川 真矢、縄田 雄哉、永滝 元太郎、関田 豊枝、南口 奈々絵、金田 瀬奈、高嵜 百花
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鶯の十三郎は盗賊の頭ながら、人を殺めず、盗られて困る者からは決して盗まないことで、その名を知られていた。しかし悪事を企む北町奉行所の与力、黒部源四郎の差し金もあり、子分に裏切られて一味は皆殺しの目に遭ってしまう。
十三郎自身も瀕死の傷を負うが、その命を救ったのが幕府目付の小橋貞右衛門と、居酒屋鶴田屋を営む勘助、お加代夫婦だった。

それから七年。
勘助を病で亡くした後、ひとりになったお加代を助けて十三郎は板前の源三郎と名乗り鶴田屋を繁盛させていた。そこに現れたのが火縄の砂吉という盗賊を追っているという御先手組組頭の小橋勝之助。

勝之助が自分の命の恩人・貞右衛門の息子であることを知った十三郎は、彼に手柄を立てさせようと、砂吉が大店で押し込み強盗を企てている情報をつかみ、男まさりの女将のお幸や女中のおりつが働く大店の呉服屋・丹下屋にみずから潜入することを思いつく……。
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あらすじは公式からお借り致しました。劇団☆新感線の公演です。
やって来たのは新橋演舞場

席は2階左列37番。下手側のちょっとバルコニーっぽい席。
花道が見えるようにちゃんとモニターがついてるんですねぇ( ̄∀ ̄)

新感線ってだけで、基本的に無条件に観るのは決まってるんですけども、今回は

脚本が私の大好きな倉持裕サン!

という事で、「遂にこの時がやって来たか……」と腕まくりして行きました(誰?)。
で、肝心の公演ですが

凄く良かった!

正にBLACK。いつもとは違う、渋い新感線でした。

ではレポへ~


★全体の感想★

セットは大体場所をカバーしてますね。
1幕は主に、居酒屋の鶴田屋のセットがメインでした。
『五右衛門VS轟天』の『月夜酒』のシーンを思い出してしまった(笑)。

物語は、昔、鶯の十三郎と呼ばれた盗賊だった男が仲間に裏切られ、瀕死の重症を負ったところを救われて更生。
恩を返していくという物語。
復讐が多い印象の新感線には珍しい恩返しモノです(笑)。
いや、復讐も後々には含まれてくるんですけどね。

今回の脚本は、前述の通りの倉持裕サン
私が唯一脚本家でチケットを獲る方です( ̄∀ ̄)
倉持サンって、自身の劇団や小・中劇場で脚本を書く時は、現実的な世界観の中にどこか不条理な部分があったり、もしくは設定自体が割とファンタジックだったりとか、やや人を選ぶ脚本が多いんですよね。
でも、大劇場とかミュージカル向けの脚本を書くと、一気に大衆向けにシフトして、伏線の回収とかテクニカルな部分がより浮き彫りになるので、唸らされたりする事もしばしばあります。
何を書いても上手いのですよねー(エコヒイキ?)。だからこそ好きだったりするんですけども。
まぁ、私は彼の脚本とフィーリングが合うので、大分愛が偏っているとは思いますが(笑)。
そんな彼が新感線の脚本を書くという事で、どうなるのかな~と期待半分、不安半分で観ていましたが、これがなかなか良いのですよ。

今までになく内容がちゃんとしている!(今までは何だと?)

冒頭は、席位置の問題もあるのか、やや台詞が聞き取りにくく、集中ができませんでしたが、徐々に会話で聞かせる展開にのめり込んでいきました。
ケレン味のある感じではなく、言葉選びの面白さで台詞が運ばれていくところは、倉持サンらしいところではないかなと思います。
あと、1幕最後の脱力した感じも、まず中島サンではやりそうにないので新鮮でした( ̄∀ ̄)
特に2幕は面白く、笑える展開から畳み掛けるようにラストまで駆け抜けるので目が離せません。
恩返しモノとはいえ、決してハッピーエンドだけではないのです(ノД`)・゜・。
客席に委ねるようなラストシーンも、新感線ではちょっと珍しいかもしれないですね。

ただ、会話劇や物語に比重がある分、いつものド派手で殺陣満載な新感線を期待している方には、物足りないのも確かだと思います。
殺陣の見せ場は、本当に最初と最後しかないので(汗)。
そもそも、ゲストには新感線的な殺陣できる人いなさそうですよね(コラコラ)。
場転に盆を使うのはダイナミックで良かったと思いますが、折角の演舞場で花道があるのにそこまで大活用できる内容ではなかったのも、残念と思った方も結構いるのではないかなと思いました。
唯一、幽霊役の粟根サンがスッポンを使って登場するところは基本にのっとった使い方だったと思います(笑)。

個人的にはとても気に入った演目ですが、人によっては

NHKの時代劇かよ

なんて印象も持たれたかもしれませんく(´□`;)

キャストは言うまでもなく全員上手いです。
特に新感線の団員の人達に関しては、芝居が上手い事を思い出せました(今更かよ)
いつもは、座付きの脚本家がやっている分、キャラ立ちの方が先に来ている感じなので、芝居がどうとかは考えてすらいなかったので(オイ)。

では、お次はキャストさん感想へ↓

鶯の十三郎●古田新太サン
冒頭のシーンでは、多人数を相手取って立ち回りを披露してくれますが、ちょっと動きが鈍かったので、やっぱりお年なのかなと思ってしまいました(すみません)。
メイクはちょっと京本政樹風(笑)?切れ長な感じでした。

更生してからは、明るい居酒屋の料理人・源三郎として、命の恩人の一人である加代と共に働きます。
明るいけど、どこか胡散臭い感じがするのは、役柄というよりかは、古田サン本人の持ち味ですかね( ̄∀ ̄)
泥棒稼業からは足を洗った筈の彼ですが、命の恩人の息子であり役人の勝之助の手柄の為に尽力します。それが彼なりの恩返しだったのですね。
大東くんとの掛け合いは?筋み合わない感じで面白く、クスッとできます。
付かず離れずの加代との掛け合いはちょっとハニカミな感じですが、何となく本当に好きなのかどうかはちょっと分かりにくかったような?
古田サンってあんまり恋愛モノやってるイメージもないですもんね(笑)。
幽霊になった勘助との絡みはかなり笑えます。脚本家が変わったとはいえ、古田サンのいつもの面白さは健在ですな。

冒頭の殺陣は前述の通りでしたが、最後の砂吉一味との大立ち回りは鬼気迫るものがあって、お見事でした。
この為に力を温存していたのかしら……(笑)。

ラストは前述の通りに、客席に委ねる形になっていました。
最後に刃をとって復讐相手を待ち受ける古田サンのシルエットはカッコよかった。
でも、本当はちゃんと決着をつけたラストを観たかったですけどね。
これは、古田サンではなくて、倉持サンに原因がありますが(すみません)。

お加代●稲森いずみサン
稲森サンを新感線で観るのは、『蛮幽鬼』以来ですね。そういえば、あれも演舞場でしたな( ̄∀ ̄)

彼女は何だかんだでまだ若いイメージがあったりするんですが(未だロンバケのイメージが・笑)、所帯じみたおかみサンの役もなかなか板についていました。
粟根サンとのドタバタしたやりとりも息が合っていて、ちゃんと夫婦らしさがあります。
喋り方なども、オバチャンっぽくしているので、古田サンより年上の役作りなんですかね。
上手く見せていたなと思うのですが、なにぶん古田サンが見た目的に結構オジチャンなので(オイ)年上設定ならちょっと無理はあったような・・・・・・(すみません)。

十三郎の悪い部分には一切関わっていない方ですが、そこまで深く問い詰めず、彼を信じている様子は古きよき女性像という感じですね。
何か、こう言うとちょっと悪意のある言い方に聞こえてしまうかもですが、褒め言葉です(笑)。
待つ女の切なさを明るくもしみじみ表現している稲森サンは、今までの彼女のイメージとは全く違ったので感心どころでした。

愛嬌があって女性としての可愛らしさもあるお加代サンは、『蛮幽鬼』の時の美貌の妃とはまた違ってとても良かったです。
古田サンとの並びも良いですね。

小橋勝之助●大東駿介くん
大東くんを新感線で観るのは、番外公演の『港町純情オセロ』以来ですかね。
あの時は、オネエキャラでしたが、今回は普通の男性役です(笑)。
倉持脚本によくいるキャラというよりかは、新感線でよくいそうなキャラですね。
楽天的で、真面目すぎて面白い人みたいな(どんな?)。
ザ・主人公キャラ( ̄∀ ̄)
正義感が強く、育ちが良くて非常に憎めないキャラですが、不器用すぎて足手まとい(笑)。
1幕最後も彼の楽天的な姿で終わります。

丹下屋に源三郎と共に潜入した時も、育ちの良さと役人らしい偉そうな態度(笑)が災いして明らかに怪しまれてしまいます。
丹下屋ではすっかりイジられキャラになってしまっている姿が笑えました。
おりつとはちょっと良い感じになりますが、ラストは……(ノД`)・゜・。
早く源三郎来てくれ~~と願いながら観ていましたが叶わず……。
確かに死亡フラグ立ってるなとは思いましたが、死に際は切なくて胸が締め付けられました。
だからこそ、源三郎の見せ場の大立ち回りが生きるのですけどね。

殺陣は大振りでそこまで上手くはなかったですが、どう考えても強いキャラではなかったですし、むしろそんな彼が頑張って立ち回っている姿はハラハラさせられて良かったです。

前回オネエで、鹿殺しでは役者崩れと、大舞台でも小劇場でも上手くやれる俳優サンなのね~と好印象でした。

おりつ●清水くるみちゃん
出番は2幕からですかね。
くるみちゃんを観るのは『ロミオ&ジュリエット』以来。
あの時は、ちょっと野暮ったいな~なんて思っていたんですが(すみません)、今回はむしろその野暮ったい感じがとても良かったです。
強気でチャキチャキした田舎娘で、勝之助の正体を知らない時は、彼にもかなりガンガンと物言いします。
本来、ジュリエットみたいな清楚な役柄よりも、こういう強気な役の方が合っている娘なのだろうなと思いました。

勝之助との絡みは面白く、身長差も良い感じ。
どうなるのかな~と見守りたい気持ちもありましたが、勝之助はあえなく・・・・・・(ノД`)・゜・。
丹下屋も崩壊してしまったし、残された彼女はどう生きていくのかなぁとちょっと気になってしまいました。

火縄の砂吉●橋本じゅんサン
前回あんなド変態役だったのに、今回は悪い親分の役です。
最近、こんなに抑えたお芝居のじゅんサンは記憶になかったので、ちょっとビックリ。
人当たりは優しく、穏やかそうなのですが、実は裏ではかなり悪どい事をしています。

じゅんサンって、やっぱりコミカルなキャラの印象が強いので、相当残忍で食えない雰囲気のある今回の役は新鮮。
愛嬌一切ナシ!本当に極悪人です。
コミカルなシーンと言えば、しきりに十三郎に甘いものを薦めてくるってところですが、そこもむしろ極悪な事を考えると怖い要素だったりします。
しかも、古田サンを罠にかける役なので、それも新鮮。
普段は古田サンにコテンパンみたいな事の方が多いので(笑)。
まぁ、最終的には悪玉なんでやられるんですけどね( ̄∀ ̄)

終盤の襲撃シーンは結構酷いのでかなり心が痛みました。
この時のじゅんサンの喋りや笑い方は、いつもの小物臭い感じが出ていて、あ~いつものじゅんサンだなぁとか思いつつ観ておりました(褒め言葉になってない)。

今更ですが、こういう役が出来る方なのね~と感心でした。
やっぱり、新感線の人達は芸達者ですね。

お幸●高田聖子サン
高田サンも出番は2幕からですね。
最初は嫌な女将サンなのかな?と思っていましたが、従業員想いで気風の良い女将サンでした。
旦那サンよりも立場が上で、結構ぞんざいに扱っていて、そこが笑わせどころだったりするのですが、何だかんだで夫婦の絆が垣間見えたりします。
出番が多くないので、ちょっと残念な気もしましたが、勝之助がおりつに惚れていると勘違いした時には、十三郎と共に「がんば!」と息の合ったポーズを決めていて笑えました。
最後は、砂吉達の襲撃に遭い・・・・・・(ノД`)・゜・。
必死に従業員を守ろうとする彼女の姿が、より襲撃シーンの悲壮感を高めていて胸に迫りました。
高田サン、やっぱり上手だなぁ。

勘助●粟根まことサン
かなり冒頭で死んでしまうのですが、何故か死んでからの方が出番が多いという(笑)。
居酒屋ゆうれいですね(別の作品)。
死んでからの勘助は、十三郎とお加代を見守る存在として度々現れます。
でも、姿が見えるのは十三郎だけ。お加代とくっつけとチャチャを入れたり、色んなアドバイスをしてきます。
十三郎には、幽霊で神出鬼没なら、砂吉がいつ丹下屋を襲撃するかも分かるのでは?ともっともなツッコミを入れられていましたが、興味のない人のところには現れることができないとかご都合主義的な理由を言っていました(笑)。

前述の通り、スッポンの正しい使い方をしているので、登場シーンはちょっと面白いです。
顔も白塗りだし、如何にも幽霊って感じですしね。

彼の存在が人情喜劇的な側面を上げていて、尚且つ笑える要素となっていて良かったです。

小橋貞右衛門●山本亨サン&黒部源四郎●大谷亮介サン
大先輩のお2人は、お芝居をしっかり締めてくれておりました。

山本サンは、十三郎の恩人で勝之助のお父上。
前述の通り、台詞が聴き取りにくいシーンが結構気になったんですが、山本サンは群を抜いて聴き取り易かった。
あの古田サン(どの?)を包み込むような、懐の広いお芝居も◎。

大谷サンは、黒幕役。『相棒』を卒業してしまって久しいですが、まさかこんな悪代官(?)をやっていたとは(笑)。
相棒の三浦サンとは打って変わった、如何にもな時代劇の悪役。
喋り方といい、佇まいといいヒール感たっぷりで◎。
そこはかとない小物感も往年の時代劇っぽくて良いですね。


レポはこんなところで。

倉持サン、今度はまた違う路線の脚本で、また新感線に再登場してくれないかな~。
たまにはこういう渋い新感線もいいっすね( ̄∀ ̄)

では、お付き合い頂いた方はどうもでした!

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